「アトスッ、これ!」
「アラミス?何だこれは?」
「今日って普段の感謝をチョコレートに託す日なんだろ?」
「はぁ?」
「ポルトスが教えてくれたんだ!だから、これっ」

そう言って綺麗な紙に包まれた箱を真剣な顔で差し出してくる。
いや、私はチョコは苦手なんだが・・・
それ以前に、最近パリで流行っているらしいその風習は・・・

「アラミス、あのな・・・」
「なに?」
「ん、そのチョコレートを贈るのはな・・・」
「うん」

小さく耳元で、"女性から男性への愛の告白の意味なんだ"と囁くと、
パッと顔を赤らめて、大きな瞳を更に大きくしてぱちぱちと瞬きをして叫んだ。

「うそっ!!」
「嘘じゃない・・・」
「最近、パリで流行ってるって・・・!」
「そうやって"愛を告白する"のが流行ってるんだ・・・」
「・・・」
「いや、まぁそうじゃないチョコも在っていいとは思うが・・・」
「・・・」
「感謝の気持ちをして受け取っておくから」
「・・・」
「そ、それに私としては君からの愛なら・・・」
「返して・・・」
「はっ?」
「ソレ、返して・・・」
「・・・」
「返してよ!」
「・・・・・いやだ!」
「え」
「いやだ。一度受け取ったからには私のものだ!」
「何言ってるんだよ!返してよ!甘い物苦手だろ!?」
「いや、ワインと一緒にならイケる!」
「そんな訳ないだろ!」

アトスが右手に左手にと持ち変えるチョコをアラミスは何とか奪い返そうと、
右に左にと手を伸ばすが、長い腕に阻まれて届かない。
痺れを切らして、体ごとアトスを近くのソファに押し倒し、今度こそはと
手を伸ばすが、アトスはくるりと体を器用に回転させるとアラミスの両腕を押さえ込んだ。

チョコは何時の間にか、傍のテーブルにきちんと置かれていた。

「放せよ!アトス」
「まったく・・・何を今更意地になってるんだ?」
「"アラミス"がアトスにチョコを贈ったなんて噂になったらどうするんだよ!」
「・・・むしろ好都合だ」
「え・・・」
「こちらから噂を立てたいくらいだな」
「何言ってんだよ!」

反抗してくる蒼色の瞳を射抜くように、掴んだ腕に力がこもる。

「いたぃ・・・アトス」
「アラミス、最近ダニエルは誘ってくるのか?」
「ダニエル?」
「あと、リュカは?例の公爵は?」
「え、ええと・・・」
「ちゃんと断れって、言ったよな?」
「う・・・」

まったく・・・油断も隙もない。
無防備な上に無邪気で・・・

バツの悪そうな顔をして、目を反らし始めたその姿に苛々とした独占欲が起き上がる。

「やっ、、アトス!こんな所で何するんだよ!」
「噂の火元を作るか・・・」
「なっ!馬鹿、やめろって・・・ 」
「やめない」


*****


後日、多少の噂は立ったが、その美貌にますます磨きをかけた(ように見える)
アラミスには、相変わらず各方面から誘いが掛かってるようだ。

苦労と苦悩は続くな、とアトスは無邪気に笑うアラミスを見ながら優越感混じりでため息をついた。

直線上に配置



バレンタインに間に合わず・・・
今更ですが、軽めのアトアラを書いてみよ〜っと思い。

雪華の書くアトアラはフラさんの影がちらちらし過ぎなので、今回はバッサリ


2010年発掘された続き















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