「明日は別々の道だ、早く寝ろよ」
「わかってらい!」

ダルタニアンはガスコーニュへ、ジャンは母親を探しにパリから旅立った夜。
焚き火の温もりと別離の寂しさを感じながら、ジャンはずっと気がかりだったことを
口にした。

「ダルタニアン、あのさ・・・」
「ん?何だよジャン」
「アラミスのことなんだけど、アラミスはね・・・」

その言葉にダルタニアンは反応し、体を起こす。
ジャンが言いにくそうにしているのを見て、自分が言葉を続けることにした。

「女なんだろ、アラミスは」
「ダルタニアン、知ってたの?」
「ベルイールで知ったんだ。ジャンはいつから知ってたんだよ?」
「オイラ?オイラは・・・その風呂屋をやってたころに・・・」
「ず、ずいぶん前なんだな・・・」

お互い少なからずショックを受け沈黙する。自分しか知らない、という小さな優越感を
感じていたからだろう。
そんな気まずさの中、ジャンはポツリと呟いた。

「・・・そうだよ。オイラはずっと前からアラミスのこと知ってたから、だから心配なんだよ」
「心配?」
「・・・ダルタニアン達、全然アラミスのこと守ってくれないじゃないか」
「守るって、アラミスは人に守られなくても・・・」
「何言ってんだよ!アラミスは女なんだよ!女を守るのは男の役目じゃないのかよ!」

思わずジャンは声を荒げる。ずっと思っていたことだった。どうして・・・

「どうしていつもアラミスなんだよ!首飾り事件の時の銃の傷はひどかったんだよ。
ずっと腕が上がらなくてアラミスがどれだけ苦しんでたか・・・。鉄仮面事件では
裏切り者呼ばわりされて、ベルイールでもまた傷を負って・・・。ダルタニアン達は
いつも無傷で帰ってくるのに、どうして・・・」

オイラがもっと大人だったら守ってあげられてるのに。
自分の小さな体が悔しくって仕方なかった。
涙ぐむジャンの姿を見て、ダルタニアンは小さな親友の肩を抱いた。

「そっか、ごめん。ジャンの言うとおりだな。これからは俺がアラミスを守るから、だから
お前は安心して母さんを探しにいってこいよ」
「ほんとに?」
「ああ、ほんとさ。俺が嘘ついたことあったかい?男と男の約束さ」



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あら、この約束からすると劇場版でダルタニアンはジャンに怒られちゃいますね。
パリに戻ってきたジャンが「アラミスは〜?」「それがさ・・・」
「守るって約束したじゃないか!」って感じで。



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