シャトレの牢へアトスを護送中に「私にはわかっている」と言われた時、 心がコトリと音を立てた気がした。 ひどい裏切りをしたのは自分であり、友人の縁を切られたのも仕方の 無いことだった。その後、孤独に押しつぶされそうな自分を奮い立たせ、 もともと心に居るのはフランソワだけだったのだと、友人との思い出を閉め出し、 鍵をかけたはずだった。 「ベーズモー殿、申し訳ないがこの男としばらく話す時間をもらえないか?」 「はぁ、大丈夫でございますか?」 「心配はいらない。何かあったら私が責任をもつから」 「そうですか、では・・」 鍵を預かり、アトスと牢の中で二人きりになる。 アトスの藤色の瞳が私を優しくとらえる。 全てを話してしまってもいいのだろうか。 「アトス、君はどこまでわかっているんだい?」 「我々を本心から裏切っているわけではない、ということはわかっているさ」 「そうじゃなくて・・・」 「そうじゃなくて・・・?」 |