Francois-U

「フランソワッ」
陽に輝く金髪を振り乱し、美しい少女が駆けてくる。
まだ幼さの残る表情と、反して女として成長しつつある体。
そのアンバランスさに男の欲情の火が灯る。

「叔父様に貴方に会うなと言われたの!だけど私っ」
「ああ、ルネ落ち着いて」
「私...」
大きな瞳を潤ませて少女は男を見つめる。何の陰りも無い瞳で。
男は優しく口付けを落とし、森の奥へ誘う。

しばらく触れることができないと思うと惜しい気がし、男は常より時間をかけて少女を愛する。
ゆっくりと、確かめるように。自分の香りが、癖がこの体に残るように。
若く瑞々しい裸体が緑深い日差しを受けて輝く。

最初はぎこちなかった少女からの愛撫も、今では男に充分の快楽を与えていた。
一生懸命なその姿はいじらしく、また淫らで白い雪原を汚したような背徳感と征服感に男の快楽は頂点を迎えた。

「愛してるよルネ」
「...私も...フランソワ」
所々にその所有の跡の残る白く美しい肌をさらした少女を、男は優しく抱きしめる。
震える体を愛する人の胸に摺り寄せ、深い息をする金絹の髪を撫でながら彼はゆっくりと話し始める。

少女の後見人である伯父と話した事、自分とその主人が違う土地に移る必要がある事、
けれど遠からず必ず君のことを迎えに来る、と。

「私、あなたのご主人のこと嫌いだわ」
男が話し終わると、蒼の瞳に明らかな不快の色を示して少女は言う。
先ほど縋りついてきた時と同じ瞳とは思えない位、強い意志を宿らせた瞳だった。

「どうして?」
「貴方の自由を奪ってる」
「ルネ、私の自由は私の意志では決められないのだよ」
「そんなの・・・」
「私は本当は誰かを愛してはいけない立場の人間なのだから」
「そんなのおかしい!貴方の人生は貴方のものよ!」
「違うんだよ、ルネ。私の人生はあの方のものなのだよ」

自分を絶対的に必要としている"あの方"をこの国の王に据え、それと共に自分が在ること。
それ以外は意味を持たず、少女を愛している事も何もかも、全てその目的に繋がるものでなければならない。

「それにあの方に仕えていたから私はこの地に在ることができて、君を出遭えたのだよ」
「違うわ、例え貴方がこの地に居なかったとしても、私は貴方を見つけたわ。
それが世界の果てだとしても、私は貴方を探し出すわ!」

なだめるように男が言うと、その強い意志を持った瞳はすかさず言い返してくる。
そんな運命論、と鼻白む思いがしたが、恋する娘はこの手の話が好きだ。そのことには触れず、男は続ける。

「私達のこと、誰にも話してはいけないと言ったよね?もし話せば会う事ができなくなるとも...」
本当は問い詰めたい気持ちであったが、そんなことはおくびにも出さず穏やかに問う。
歳若い恋人は男への激しい愛情を止められず、語調を強くする。

「確かに、昨日伯父様にしばらく貴方に会ってはいけないと言われたわ...」
「ほら、僕の言った通りに...」
「けれど!伯父様の言葉なんて関係ないわ!私は馬も駆れるし、どこまでも行けるわ。
私が貴方に会いたいと思えば、私は貴方に会いに行くわ!」
自分の言葉を遮る少女のその強い意志と気迫に男はいらつきを覚える。
しかし、言い出したら聞かない娘だということは判っているので、話を改める。

「どうして僕達のことを話したの?」
「・・・隠す意味がわからなくなったから。隠す必要がどこにあるの?」
「・・・」
「ねぇ、教えてフランソワ。貴方の主人は誰なの?貴方ほど人を側に置くなんて、よほどの人なのでしょう?」
「ルネ、それは聞かない約束だよ」
「私、貴方の役に立てると思うの。剣も少しは使えるし、馬だって誰より速く駆れるわ。
あの家を出たっていい。貴方の側にいて、役に立ちたいわ」

面白い少女だと思った。男は少女のこういう所に惹かれていた。
凡庸な娘と同じように夢見がちな所もある。しかし幼くして両親を亡くした事も関係しているのだろうか、
神に祈っても何も変わらないことも知っている。
ただの愚かな女であれば2,3度の情事の後適当な理由をつけて会うことも無くなるが、
少女は歳に似合わぬ考えを持ち、磨けば確実に輝く美貌と男を魅惑する肉体を持っている。
彼女と話をすると王弟に教鞭を執る時と同じように、ぞくりとする予感を男は覚えていた。

「私にできることはないの?」
その真摯な少女の問いに男は自分の試案を少しだけ口にすることにした。

「...まだ早いんだ」
「早い?」
「そう、だがいずれ君が必要となる時が来る。その時まで待って欲しい」
「待っているだけでは、叶わないことが多いわ」
「私は必ず君を迎えに来るから」
「本当に?信じていいの?」
「ああ、信じて。私を愛しているなら信じて欲しい」

納得はしていないようだが、静かに頷き男を見つめる。その憂いを含み愛するものにだけ向ける瞳の揺らぎ。
この少女ならフィリップ様への奉仕を自分への愛として喜んで受け入れるだろう。
その確信に男の欲情の火がまた灯る。

森の神達に彼女の素肌を再び晒し、愛撫に震える可愛らしい声を響かせる。

その行為の中でも男は冷静に計画を思案する。
次に移る場所では急がなくては・・・
もうあの方の存在が明るみになるのも時間の問題だ。








ルネってどういう少女だったのか、悩みました。
「何も知らない田舎娘」で最初は書いてたんですけど、
それだとフランソワまで凡庸な人間になりそうで・・・

「フランソワは凡庸な娘だと最初は思っていたが、実は"ちょっと"違った」
くらいがいいのかな〜と。何もかもパーフェクトな娘だったらアラミスになってから
成長しがいが無いので、その余地は取っておきたいかな、と。
そしてフランソワは知らず知らず、自覚無しでルネちゃんに心奪われてます。

(これは設定しがいがあるのでいずれ他のパターンでも書いてみるかも・・・)

で、読み直してみると何かいまいち、ルネちゃん自己中娘かも・・・
けど16歳だしいいか











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