11月なのでポルに話は移ります。



「お〜い、ダルタニアン?明日の勤務のことで言い忘れたことがあってな〜」
のんびりした声がセーヌのほとりに響く。
「ポ、ポルトス・・・」
「どうした?」
「い、いやぁ・・・」

瞳を潤ませたアラミスと、動揺を隠しきれないダルタニアンを見て
おおよその事情を理解したのか、ポルトスはやれやれと小さく呟き
アラミスの頭をぽんぽんと叩いた。


   ***


「・・・というわけだから、明日は直接ルーブルに来ればいいからな」
「あ、ああ。じゃぁ、明日。ポルトス・・・アラミス」
「ん、おやすみ。ダルタニアン」
「・・・おやすみ」

また動悸が治まらないのか、足早に立ち去るダルタニアンを見送ると、
今度はばちん、と音を立てて眼下の形のいい頭を叩いた。
抗議の声が上がる。

「いったぃ〜〜。何するんだ!」
「何、じゃないだろ。いたいけな少年をからかうんじゃない」
「誰だよ、それ」
「ダルタニアンにはコンスタンス殿が居るんだから」
「他でも遊んでるだろ」
「お前を一晩限りの相手として割り切れるほど、あいつはまだ大人じゃない」
「じゃ、ポルトス?大人の君が相手してくれるの?今夜限りの相手として?」

挑発的な顔で覗き込んでくる蒼瞳を避わして先を歩き出すと、カツカツと
後ろから追ってくる音が辺りに響く。

「ポルトス〜?」
「・・・二度とごめんだ」
「此間のは、何時だったっけ?」
「・・・」
「あ!アトスの誕生日の夜だ」
「・・・」
「次の日、寝不足の上酒は抜けてないわで二人揃って隊長に怒られたんだよね」
「・・・」
「あははは、明日も雷が落ちるのかな〜?」
「・・・アラミス!!」

黙って先を歩いていたポルトスが急に立ち止まり、声を荒げた事にアラミスは驚き
同じく足を止めた。


「俺やダルタニアンをアトスの代わりにするな!」
「なっ・・・」
「それと・・・アトスを婚約者殿の代わりにするんじゃない」
「・・・!!」
「お前にとって、フランソワ殿がどれほどの存在だったのかは知らないが、アトスはアトスだ。
俺は俺だし、ダルタニアンはダルタニアンだ。」
「・・・そんなことくらい、」
「わかってる?わかってないだろう?」
「・・・」
「それに・・・アトスへの中てつけに俺やダルタニアンと寝ても、アトスは変わらない」
「・・・」
「そんなやり方じゃ、アトスとは向き合えない」

返す言葉を失い項垂れたまま足止まったアラミスの姿を、離れたまま見ていたポルトスだったが、
いつまでも無言のまま動かない相手に呆れつつも少しずつ距離を縮めた。

「アラミス?」
「じゃあ、どうすればいい?」
「・・・」
「僕はこれからどうすればいいんだろう」
「・・・」
「・・・わからない」
「そうか」
「アトスのことも、フランソワとのことも・・・」

抱き締めたくなる衝動を抑え、細い肩を抱いて強引に歩き出す。
驚いた表情を見せるアラミスの顔を直視しないよう、朝日が昇り始めた空の色を
吸い込むように前に進み続ける。

「ポルトス?」
「キツイ言い方をして悪かった。ま、焦るな。そのうちお前とアトスはうまくいくさ」
「え?」
「長らく友人をやってる俺が言うんだ。間違いない」
「・・・そのうちって、、、いつさ?」
「ん?さぁ〜。お前のその性格が直ったら、かな」
「・・・無理だよ」
「自覚があるなら、少しは直す努力をしろ」
「何だって?」

恨めしげに見上げてくる表情が滑稽で、ポルトスの顔も思わず緩む。
それを見て、アラミスの天使のような笑顔が咲く。

こんな日々がもう少しだけ続くように、つまりアトスとアラミスが纏まるのは
もう少し先になるように、ポルトスは昇る陽にこっそりと祈ってみるのだった。


                   <Fin>









3人の誕生日とは何の関係もない話になってしまいました。
情緒不安定、やりたい放題ののアラミスです。

そして最後に事態を収めるのはポルトス兄さんでした。
アトスは、我関せずだろうし・・・
ダル坊じゃ〜、流れに巻き込まれるだけだし・・・
















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