・・・10月なのでダルに話は移ります。



「それでフランソワがね・・・」

アラミスはさっきからずっと上機嫌で、フランソワの話をしてくる。
酔っ払ってるとはいえ、いや酔っているからだろうけど、赤らめた顔は
"銃士のアラミス"じゃなくて・・・まるで恋する少女みたいだと思う。

「野蛮な銃士なんかと違ってフランソワはね、物静かで優しくて・・・」

また始まったな、と心の中で小さくため息。
ベルイール事件が解決して、アラミスの過去を知って・・・
聞きたい事は沢山あったけど、何だか聞き辛くて話題に触れないでいたら
アラミスの方から話してくれるようになった。

最初は・・・そうだ、アトスの誕生日のお祝いで飲んだ帰りだった。
とは言ってもアトスは急用が出来たとかで来なかったけど。

「聞いてるのぉ?ダルタニアン!?」
「あ、ああ。聞いてるよ」

あの日以来、まるで何かの枷が外れたかのようにアラミスは自分の事を
話すようになった。そしてそれはいつの間にかフランソワのノロケ話に
なっていて・・・

俺も三銃士の皆には散々ノロケたこともあるし、その気持ちもわかるけんだど・・・
けどこうも毎回だと正直・・・困る。
月を見上げてため息をつくと、自分の息が白いことに気がついた。
そっか、俺の誕生日が来たってことは冬が来るってことだもんな・・・
パリに来て2年かぁ、なんて瞬く星に見とれてると、背中に急に重さを感じて驚く。

よろけつつ、姿勢を持ち直すと、予想通りというか・・・アラミスが俺にのしかかってきてた。
そのまま背負って彼女の家まで運ぶのも最近のお決まりになっていた。
どうしょうも無いと思いながらも、すやすやと寝息を立てるアラミスは可愛いらしくて
彼女を背負って歩くのは嫌いじゃなかった。

「よっと」
ずり落ちそうになるアラミスを背負い直すと、セーヌ川のほとりを歩く。
柔らかな風に吹かれる金の髪が鼻をくすぐって、いい香りがあたりを包む。

またぼんやりと星を見上げると、後ろで身じろぐ気配を感じた。

「ねぇダルタニアン・・・アトスってさ・・・」

そこまで言うと、アラミスは何かを躊躇して口噤んだ。
そのままぎゅっと、俺の背中に埋まって子どもみたいに小さくなっている。

「アラミス?」
「・・・」
「アトスがどうかしたの?」
「・・・。誕生日の日どこに行ったんだろうね・・・」
「え?」
「アトス」
「・・・あ、ああ。さぁ、"急用ができた"としか言ってなかったから」
「女の人の所かな?」
「・・・え?」
「男ってどうしてそうなの?」
「い、いやぁ・・・」
「ダルタニアンもコンスタンス以外の女の所に通ってるんだろ?」
「・・・!」
「フランソワも・・・」

そこまで言うと、酔いも手伝ってかアラミスは震えて鼻を啜りだした。
な、泣いてる!?

慌ててアラミスを降ろして、顔を見ると潤んだ瞳で俺を見上げてきた。
いつのまにか背を越していたことや、今更だけどとてつもなく綺麗な顔に
くらりと眩暈を覚える。

・・・やばい

肩に手を掛けてもいいんだろうか・・・
そのまま・・・?

その時、声が聞こえて動作を止めて振り向くと、よく知った顔が見えた。








ポルトスの話へ続く







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